
甘すぎて気絶
第6章 オオカミさんとウサギちゃん
「神崎まことちゃーん、発見」
ぴっと敬礼するふりをしながら
楽しそうに笑う渋谷先輩
お疲れ様です、と軽く会釈すると、おじゃましまーす、と語尾に音符が付いたように軽く弾んだ口調で庶務課のオフィスに入ってきた
突然のことに頭が着いていかないけれど
とりあえずなんで渋谷先輩?
ぐるぐる考えながら先輩にコーヒーを淹れると
お礼と共に噂の悩殺スマイルを見舞われた
「なんで俺がきたのーって顔してんね」
楽しそうに笑いながら
椅子に座りながらクルクルと回る先輩
「今日はね、竜樹はこないよ」
聞き慣れない言葉に思わず聞き返すと
え、まさか知らないの?竜樹のこと、と先輩は目を見開いて驚いている
「たつきってどなたですか??」
クルクル回るのをやめた先輩は不思議そうにあたしを見つめる
「毎日来てなかった?ここに」
毎日?たつき?
毎日ここに来てたのは‥‥
「黒澤先輩‥‥?」
ピンポーン!なんだ、知ってんじゃーん、と明るく声を上げて先輩は再び回り始めた
「俺ね、奥手な竜樹のために
一肌脱ぎにきたの!」
「は、はあ‥‥」
正直何の話をしているのかイマイチ分からないし
どんな反応したら良いかもわからないけれど
とりあえず先輩の話を聞く
「竜樹はね、見た目オオカミみたいだけどね〜押しが足りないっていうか〜奥手っていうか〜」
意外とね〜可愛いとこあるんだよね〜、と先輩は話し続けるけど
もはやあたしには理解不能で
ぼんやりと流しながら仕事を片付けた
次第に話題はあたし自身のことへと移り、結局ピーマンが好きだという話題でひとしきり盛り上がった
そんなあたしたちを黒澤先輩が見ていたなんて知らずに
