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愛の嵐

第31章 過去×未来=今

《大野時間》

左手首を押さえながら前を歩く背中を見つめた
別人だな
最後に見た雅紀はまだ幼くて可愛かった
身長も同じくらいだった
眼鏡も掛けてなかった
俺の知る10年以上前の雅紀はいない

大「ちょっと淋しいな」
相「ん?何か言った?」
大「何でもない」

会社内を次々に案内される
会議室3と書かれた部屋に入っていく

相「ここでいっか」
大「何が?」
相「あ~、なんだ、話・・しよう」
大「そ、そうだな」

微妙な空気が流れる
ガチャンと鍵が掛けられる音が響いた

相「あ、変な意味・・じゃないから!これで此処を、使用中だって外に、分かるようになってんだよ」

しどろもどろに説明する雅紀に笑える
そ~いう所変わらないな
頭を掻きながら明後日の方を向く
その横顔は格好いい

相「とりあえず座ろっか」
大「そうだね」

そう答えたのに
長い指先を捕まえて引き寄せてしまう

相「えっ?うわっ!」

体勢を崩した雅紀を抱き締めた
俺が小さいから抱き付いたってのが正解か

相「さ、智?」
大「逢いたかった!」

俺の言葉にピクリと身体が反応した
ふぅ~っと頭上で息が吐かれて強張った身体から力が抜ける

相「あぁ、俺も逢いたかったよ」

腕を背中に回されて抱き締め返された
俺の知らない雅紀の香りがした
チクリと胸を痛くした事は言えない
離れていた時間を思い知らされる

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