売られ少女
第3章 ケントという少年
私は、ケントの部屋の片隅で朝を迎えた。
シーツと毛布、そして枕をあてがわれて、それを床に敷いて寝た。
粗末な扱いのようだが、渡されたシーツが私の家のものよりはるかにふかふかで、思いのほか寝心地が良かった。
…少し悔しいけど。
私が上体を起こすと、ケントは鏡の前に立ってネクタイを結んでいた。
鏡越しにちらとこちらを見る。
「ようやく起きたか。飼い主よりも長く寝るとはいい根性だな」
意地悪そうに笑うケント。
私は、ふんとそっぽを向いた。
「私は人間ですから」
「ふっ、まあいい。俺はこれから出かける。エサは使用人に運ばせるから、お前はこの部屋を出るなよ」
ケントはそう言うとカバンを持ち、ドアに向かって歩く。
そして、
「帰ってきたらまた調教してやるからな。楽しみにしておけよ」
冷たく笑って部屋を出て行った。