売られ少女
第3章 ケントという少年
部屋の入口には、昨日の大柄な男が立ちはだかっている。
逃げ道はない。
私は溜め息をついた。
私はどうしてこんなところにいるんだろう。
あの少年…ケントは、どうして人を人とも思わないような言動ができるのだろう。
ちらりと大柄な男を見た。
無表情でじっと前を見つめている。
私は、思い切って口を開いてみた。
「ねえ」
男は無反応だった。
こちらに目を向けることすらしない。
…家畜の話なんて聞かないってことかしら?
私は腹が立ち、少しぶっきらぼうに言葉を投げかけた。
「あなたのご主人様って、どうして私をこんなひどい目に合わすの? どう考えてもおかしいわ」
男は何も答えない。
「あの人だけじゃない。この家の人間はみんな変よ。狂ってる。人間のことを家畜呼ばわりしたり、それを平気な顔をして見ていたり……あなたたちのやっていることは人間のやることじゃない。あの男も人間じゃないわ。悪魔よ」
私は思いの丈をぶちまけた。
涙が溢れそうになる。
しかし、これ以上弱味は見せたくないと思い、必死に堪えた。
男はしばらくだまっていた。
しかし…
「ケントお坊っちゃまは…」
ゆっくりと話し始めた。