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俺の運命の相手が、男だった件について。

第1章 ありえない運命だった件について。

「─さて」

フゥ…と一息ついて、女の人は俺に目を向ける。

「次は…君の番ね?」

「あ…はい。」

しんみりとした空気が、一気に新しいモノへと変わる。

せっかく和らいでいた緊張が、再び宿っていく。

玲は席を立つと、俺がさっきまで立っていたのとは反対の位置に立つ。

背後に玲の気配を感じながら、ゆっくりと椅子に座った。

「君も恋愛でいいのかしら?」

「あ─はい。まぁ…」

何となく抵抗があった。

玲の占いを見て、この人は本物かも知れないと思った時、同時に真実を知ってしまったらどうなるのか…

なんていう、不安も一緒に出てきてしまったから。

「そんなに緊張しなくてもいいわ。」

ゆっくりと、落ち着かせようとしているのが伝わる声色で女の人は微笑んだ。

「…はい。」

その声と笑顔に、幾分か落ち着いた俺も、微笑んで笑顔を返す。

「…─では、初めましょうか。
…あなたもタロットで?」

「あ、いや。俺は…─」

何て言おうか迷った。

色々と疑問はあるが、口にして良いものなのか解らない。

…それに、やっぱり怖い。

落ち着いたと言っても、不安が消えた訳では無いのだ。

「…では、水晶で占いますか?
成功率はタロットも水晶も変わりません。

…まぁ、強いていうなら、水晶の方が時間は掛かりませんよ」

「そーなんすか…。じゃ、水晶で。」

成功率は変わらないのに、なんで占い方が二通りあるのか。

やっぱりよく解らない。

「タロットはね…」

「え?」

いきなり話し出した女の人に、疑問の声が出る。

「説明よ。あなた、不思議そうな顔しているもの。」

柔らかく微笑む彼女に、自分の考えていることが、全て見透かされているような…

そんな錯覚に陥る。

「タロットは…そうねぇ。
例えば、運命の人を占うとしましょ。

その時、何処でどう出会うか。
そう言った感じの事しか解らないのよ。

運命の人の事は、出会ってから知りたい、みたいな人に好まれる方法ね。」

「そうなんですか…」

「ええ。…でも水晶は、私にだけ顔も見ることができる。

簡単に言うと、運命の人のことが、私に割と細かく見えてしまうの。」

「あ、なるほど。」

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