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身代わり妹

第5章 揺心

転院の話は平行線のままだった。

母はどっちつかずでいるが、姉と凌太は転院を断固拒否していた。



ため息を吐き、姉の病室を出る。


「美優、ちょっといい?」

由美さんに呼ばれ、私と由美さんはそのまま婦長室へと向かった。



「前にも話したよね? 美姫さんの転院の話…時間が掛かっても治る可能性があるって事も……」

確か大学病院で姉の病気を研究していて、このまま秋村病院で治療するよりは治る可能性があるって話だった。


「でも、2人を引き離すのは……」

先程の2人を思い出し、俯いて唇を噛んだ。



「引き離されたのは、美優と凌太でしょ!」


由美さんらしからぬ怒りを孕んだ声。

でも、それも昔の話。

凌太は今日、お姉ちゃんにプロポーズする。



「大学病院だからね、凌太は入院費の心配をしているんだと思う」

由美さんの優しい声にハッとさせられる。


そうだよ…大学病院で個室なんて言われたら……‼︎

優しい凌太の事だから、本当に入院費の心配もしてくれていたのかもしれない。



「でもね、これは美姫さんの病気のデータが欲しいという大学病院からの提案なの。だからそれなりに補助があると思う」

由美さんはそう言っていたけれど、秋村病院と違い頼れる人がいない分、大学病院の入院費は今より高額になる事は明らかだった。



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