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身代わり妹

第5章 揺心

田口さんが立ち去っても、私は連絡先の書かれたメモ紙を握り締めたまま立ちすくんでいた。



「一晩で10万って絶対ヤバイ仕事ですよ! 連絡しちゃダメですよ?」

「うん……」

突っ立っていた私を強引に座らせる花純ちゃん。


一晩で10万…そんな美味しい仕事…絶対裏があるに決まってる。



中卒で仕事がなく、姉の入院費のために援交しようとした事を思い出す。

凌太がホテルに飛び込んで来なかったら、私はあの時に過ちを犯していただろう。

由美さんにもこっぴどく怒られた。


2人を悲しませるような事はしない……。

そう固く誓った。



なのに─────…


私は田口さんに渡されたメモ紙を見つめていた。

そのメモ紙を捨てられず、私は大事に手帳に挟んでいた。


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