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身代わり妹

第5章 揺心

「美優?」

トイレから出て席に戻ろうとすると、名前を呼ばれた。


「奏佑くん?」

振り返れば、カウンター席に奏佑くんが男友達らしき若い子と座っていた。


「偶然だな。一緒に飲まない?」

後ろにいる花純ちゃんにペコッと頭を下げ、奏佑くんが笑顔で話し掛けてくる。


今夜は飲み会だって言っちゃったのに、ここで会っちゃうなんて…何だか、気まずい。



「美優ちゃん、大丈夫?」

私を心配してくれたのか、男性陣が部屋から顔を出す。



「……まさか合コン?」

不機嫌な奏佑くんの声。


「あ…うん……」

言い逃れ出来そうにない状況に、素直に頷いた。



「……帰るぞ」

奏佑くんが私の腕を掴み、強引に引いていく。


「え⁉︎ 奏佑⁈」

「ちょっ、美優先輩⁉︎」

「え⁉︎ おい、お前っ!」


慌てた皆が一斉に手を伸ばす。


「美優は俺が落とすんだ! 合コンなんか行かせられない」

ギュッとキツく、奏佑くんに抱き締められた‼︎


「ズルいだろ! 俺らにもチャンスを寄越せ」

「嫌だ!」


皆の手を振り切り、私は奏佑くんに強引に外へと連れ出されていった。


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