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身代わり妹

第4章 現実

「ありがとな。部屋に戻るから……」

そう言って立ち上がった凌太の身体が、グラリと傾く。


「凌太っ⁈」

座り込んだ凌太に慌てて駆け寄った。


「凌太、無理しないで休もう?」

それでもまたフラフラしながら立ち上がる凌太に必死にしがみつく。



「休んでる暇なんかない」

身体を押し返され、明らかな拒否の意を示される。



"凌太は美姫の病気を治すために医者になったんだよね”


いつかの姉の言葉。

姉のために、凌太はこんなに無理をするの?



「そんなに…そんなにお姉ちゃんの病気治したい?」

自分の身体を犠牲にしてまで…



「当たり前だろ!」

突然の大きな声に身体がビクリと跳ねて強張った。


「ごめん…」

凌太はハッと我に返り、私を優しく抱き締めた。



「それは…お姉ちゃんの担当医として?」

「……それだけじゃない」

「そっか…そんなにお姉ちゃんが大事なんだ」


わかってる……そう心に言い聞かせながらも、私はわかってなかった。

何処かで期待していた。


凌太の顔が見れずに俯き、ズキズキと痛み出す胸を押さえる。


「……お姉ちゃんは幸せ者だね」


久々の発作が私の身体を蝕んでいき、崩れるようにソファーに座り込んだ。



「美優? どうした? また発作か?」

振り向いた凌太が、異変に気付き慌てて駆け寄った。

でも、心配そうに伸ばされたその手を、私は強く振り払っていた。



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