テキストサイズ

そして僕等は絡み合う

第5章 南野 昴の場合

◆◇◆◇◆◇

そして…

俺は無事に宮脇さんの職場のファッションビルに辿り着いた。


以前、浄水器の営業をした時に宮脇さんが

「余り家に居ないんですよね」

と言って、浄水器は断られたけど職種とビルの名前を聞いたことがあったのだ。


その記憶を蘇らせ、持ち前の野生的勘でここまでやって来た。


服なんて殆どがレディースフロアだ。


メンズフロアは上の階の方に大抵ある。


急くようにエスカレートに乗ったが、土曜日だけあって人も多くて駆け上がれない。


メンズフロアに到着するまでが、えらく時間が掛かったように感じる。


早く!早く!はやくっ!


身体を左右に揺らして、到着はまだかと先頭の様子を伺う。


フロアに着く毎に、一人でも抜かそうと駆け足気味になった。


「よっしゃ!」


やっとこメンズフロアに着くと嬉しさの余り感動を口にしてしまうと、正面で立っていた店員さんが驚いて固まっている。


「はははは〜!失礼!」


苦笑いを浮かべて足早にその場を去り、宮脇さんを探し始めた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ