イケない同棲生活
第2章 2―契約成立
空耳かと思った。
いや、絶対空耳だと思う。
「…なんて?」
『だから、お父さんが見つけてきた男と暫く同棲しなさいっ!ちなみに、今パパの隣にいるぞ☆』
「…はあああああ?!」
なんてことだ、なんてことだ。
なんてことだ…!!!!
父の身勝手さは理解しているつもりだったけれど、ここまで来たらもう常識の範囲をとうにこしている。
「お父さん、いい加減にして!!私、別に結婚なんてしたくないし、今の生活で充分満足してるの!!」
『だが楓、子供がほしいって言ってたじゃないか。それにもう後戻りはできない。どうやら西園寺さんはお前を気に入ったようだしな。』
「う、うそ?」
『本当だ。さっき連絡がきたばかりだし、西園寺さんにさからうとウチがどうなるかわかんないんだよねー』
わかんないんだよねーって……。
でも、確かにいくら彩織でも、あの西園寺の家にはきっとかなわない。
そう。きっと初めから、私に逃げ道などなかった。
だけど…。だけど…。初めては、私が選んだ人じゃないと嫌だ・・・・。