イケない同棲生活
第3章 3――新居にて
え、と思った時は既に遅し。
私の体は宙に浮いていて、気付いた時には男に軽々と肩で担がれていた。
そのことに暫し固まり、次々と変わり行く光景を見ていたが、
「E…eeeeeee!!!?」
すぐに我に返る。
「今からセックスするって時に、色気のねぇ声だしてんじゃねぇ」
すると、男は真横でしゅっとした眉を眉間に寄せ、切れ長の瞳を細めて私をギロリと睨んだ。
しかし、私はというと。不機嫌な声で発せられたその言葉に、今度こそ固まる事になっていて。
「あ、あの~…今、なんと?」
聞き間違いですよね?
何かの間違いですよね?
これは夢ですよねええ?!
そう願う私の思いも虚しく、唐突に止まった男は、花が描かれた襖の前でぴたりと止まった。
「だから、」
そして、その扉を勢い良く開け。
「ここでてめぇを抱くって言ってんだ」
広い部屋の真ん中に組み敷かれた布団に投げ落とされた時には。
私の冷や汗は、尋常じゃないくらいダラダラと背中を伝っていた。