イケない同棲生活
第1章 1―しぐれ料亭にて
* * *
一度眠れば、きっと夢から覚めるだろうと思っていた。
けれど、起きた後母に着物を着せられ、化粧を施され、あれよこれよとおめかしされた私。
鏡を見たときには、誰!?と思うほど変わっていて。
気持ちが追いつかないままに、私の”婚約者”に会わされた。
……のだけれど。
「楓さん……」
トイレと言いたいところを「お手洗いに行きます」と言って出た私を追いかけてきたのは、例の婚約者。
思ったよりも若く、まだ20歳という彼は顔立ちも悪くない。
だけど、
「い、いきなりこんな所に連れ込んで何がしたいんですか!!」
「何って…。することは一つでしょう?いいじゃないですか。夫婦になれば必然的なことですし」
ヤりたい盛りの御曹司、というのが彼の欠点だと、本気で思った。