イケない同棲生活
第5章 罠
「――…なーんて、冗談ですよ」
「…HA?」
一瞬、自惚れた考えが頭を過ぎったけれど、固まっていた私に降って来たのは、宮島楓の噴出した笑いと、馬鹿にしたような声だった。
はっとして顔を上げると、案の定ニヤニヤとする宮島楓の姿が。
こ、こんにゃろぉおおおお!!騙しやがったな?!
「あれ、ナンデスカ?もしかして先輩、俺から告白されるとでも思ったんですか?」
あまりの恥ずかしさに何も言えずにいると、ヤツは私を見下ろしながら人差し指を口元に宛がい、
悪戯っ子のような笑みを浮かべてそう言った。
策士だ。
――穴があったら入りたいとは、きっとこのことだろうと思う。
「かっからかう為に呼び出すんじゃないわよ!!」
もう怒った。私は怒ったぞ。激おこだぞ。
きっと怒りで真っ赤になっているであろう顔でヤツを睨み、
”もうこんなヤツ無視だ!!!!”
と、オフィスに戻るべく体を反転させた。
――ぐいっ!
「、?!」
「待ってくださいよ、先輩」
けれど、それは叶わず、未遂に終わる。