イケない同棲生活
第5章 罠
あぁもう、なんなのコイツ。
ギロリ、と感情を抑える事をせず、私の腕を掴む宮島楓を睨んだ。
「……」
だけどヤツはただ微笑を浮かべるだけで。
その余裕さにまたまた腹が立つ…!!!
「何!!用があるなら三秒で終わらせて。無理なら離してくんない?」
私はこんな生意気なヤツに構っている暇はないんだ。
今日も残業なんて勘弁してほしいし、また真弘を待たせるのも心苦しい。
(…いや、真弘はどうでもいいけれど)
だから、わざときつく言ったっていうのに。
「別に俺は、先輩が誰とどこでヤッていようが興味ないんですよ。ただ、先輩に忠告をしに来たんです」
「…忠告?」
宮島楓の表情が先程と打って変わって真面目なものになったのを見ると、それは本当らしい。
私は、止められても尚宮島楓の反対側に向けていた体を、ヤツと向かい合わせになるように戻した。
「…忠告って、何?」
一応、小声で問いかけると、宮島楓も周りに人が居ないか目配せしながら、ゆっくりと、口を開いた。
「その時、俺以外の誰かが居たんですよね」
「・・・え?」
「暗くてよく見えなかったんすけど、多分男です。手に何か持ってたんで、盗撮されたかもしんないですよ」
「え、ちょっと待って。話が追いつけないんだけど」
え、何?男が私たちを覗き見して?そんで盗撮してた?
いや。いやいやいやいやいや。
「止めようよ!!アンタ!!」
「はあ?そんな面倒なこと俺がするわけないじゃないですか。しかも、情事を行ってる先輩らの邪魔になると思って、空気を読んだんですよ」
ぱっと、ヤツは掴んでいた手を離し、肩を竦めておどけるふりをした。
こ、こいつ…。いつか本気で殴ってやる。
「つまり、それを利用して脅されるかもしれないってこと…?」
「正解。さすが先輩」
とりあえず、切り替えてそう問うと、宮島楓は満足そうに笑って頷いた。
こういう無邪気なところは可愛いと思うんだけどね。
「俺の言いたい事わかるなんて、意外っすね」
「黙れ」
最後の一言が余計なんだよ、コイツは。