イケない同棲生活
第5章 罠
『とりあえず、気をつけたほうがいいですよ』
と、表面は爽やかな笑みを貼り付けた宮島楓は、そんな恐ろしい言葉を残して颯爽と去っていったのが、今から数時間前。
あの猫かぶり野朗!!といつもなら叫ぶところだけれど、
今の私にそんな余裕なんて無くて、落ち着かない心境のまま仕事に取り掛かった。
で、終わったのが現在時刻10時。
結局仕事がはかどらず、遅くなってしまった私は、チキン野朗だ。
ずっと、不安が胸に残っていて。
真弘が迎えに来るんだってわかってても、怖い。
「真弘、遅いなぁ…」
はあっと、自分の吐く息で手を温めながら、玄関口の傍にあるソファにさらに身を沈める。
白いライトはチカチカと消えたり点いたりとしていて、更に恐怖心を駆り立てられて。
ちょっとの物音で反応してしまう。
ブーッブーッブーッブーッ
「うっひゃああああ!!!」
と、突然右手に持っていた四角い箱が振動し始め、静かな玄関口で思いっきり叫んでしまった。
「って携帯かい!!くっそ紛らわしい!!誰よこんな時にぃぃぃ!!」
一人で勝手に怒りながらディスプレイを確認。
「―――…あ」
そこにうつしだされた名前を見て、瞬時に自分の心が安心感でいっぱいになったのがわかった。