イケない同棲生活
第6章 犯人追跡?
「楓?」
「何よ」
驚いたように僅かに目を開く真弘。
少しだけ開いている赤い唇に触れたくて、指先を這わすと、あれだけ真っ直ぐだった彼の目は大きく揺れた。
「頭、どっかでうったのか?」
「失礼ね。頭は正常よ。ただ…」
彼に触れるとわかるのだろうか。
どうして私がこんな気持ちになるのか。
直弥にすら抱かなかったこの欲求の意味を。
「ただ、今どうしようもなく真弘に触れたい」
「なんで?」
珍しく素直に聞き返す真弘は、既に動かしていた手を離していて。
私の腕を拘束していた力も弱くなっていた。
「わから、ない。だから知りたいの。あんたに触れてみたら、わかる気がするから」
端正な顔立ちから目が離せない。
唇を結ぶ彼の手をゆっくりと解き、半裸状態となった己の体を真弘の胸に沈み込ませる。
一定のリズムで刻み込まれる心臓の音に耳を澄ませながらそっと目を瞑って。
体全体で真弘を感じた。
「……」
静かな車内。
真弘は、抵抗しない。
でも、受け入れもしない。
いつもは回してくれる腕は、ただ座席に置かれているだけ。
けど、
「わかったのか?お前のそのよくわからないもんは」
いつになく耳に心地よい、優しい声を聞かせてくれる。