悪魔と淫美な世界へ
第7章 ~争いの先~
「しっかり捕まっていて 下さい」
用意されていたワンピースに着替えたゆきは、琉希に抱えられた状態で上空を飛んでいた。
少し離れた所では、黒い魔力を帯びた魁と黒胡がぶつかり合っている姿があった。
「琉希さん…魁は大丈夫 ですか…?」
「2人の力は互角です
以前の戦いでは、ほん の少しだけ魁様の方が 上でしたが…
今の魁様は冷静さを失 っているので、どうな るのか正直分かりませ ん」
「わたしのせい…
もし魁が死んじゃった ら…わたしっ…」
「考えても仕方がありま せん
今は、2人の戦いに巻 き込まれない様にする のが先決です」
「でもっ…」
その時、魁と黒胡の激しい戦いに屋敷が破壊され無残な残骸だけが残った。
「ここに居ては巻き込ま れてしまうので、もう 少し離れます」
「はい…」
琉希は羽を大きく広げ、巻き込まれない様に素早くその場を離れた。
「あの…
琉希さんは…前の時も 2人が争う所をずっと 見てたんですか?」
「はい
私には見守る事しか出 来ないので」
「そう…ですか…
あの…誰も死なない解 決策は無いんですか… ?」
兄弟が殺し合うなんて …悲しすぎる…
「どちらかが折れない限 り無理でしょう」
「そんなっ…」
「ゆき様、私達は悪魔で す
欲望に忠実で、欲しい 物は何としてでも手に 入れる」
「でもっ…2人が争うな んて嫌ですっ…
琉希さんっ
どうしたら2人を止め られますかっ!?
わたし何でもしますか らっ!」
泣きそうになりながらも必死なゆきに、琉希はやれやれという様子で深く息を吐いた。
「人間のあなたに何が出 来るんですか?
私でさえ、あの2人を 止める事は出来ないと いうのに…」
「それはっ…」
「分かったのなら大人し くしていて下さい」
今…わたしに出来る事 っ…
「琉希さん…2人のそば に行って下さいっ」
「死ぬ気ですか?」
「いいから行ってっ!」
今まで見せた事のない迫力に、琉希は驚いた様子でゆきを見つめた。