悪魔と淫美な世界へ
第5章 ~魔界の王~
「きゃあっ!」
なにっ!?
ゆきは反射的に固く閉じた目を恐る恐る開くと、自分を庇う様に覆い被さる魁の姿があった。
「大丈夫か?」
「う‥うん…」
「服を着て待っていろ」
そう言うと、魁はゆきから離れ破片を払いながらベッドを降りて行った。
「俺に刃向かうとは、ど ういう事かわかってい るな?
美蘭、潤那」
「刃向かうなんて、そん な恐ろしい事できない わ」
「私達、そこの人間に用 があって来たのっ」
いつの間にか窓際に美蘭と潤那の姿があり、嫉妬に満ちた目でゆきを睨みつけた。
「琉希から話しは聞いた わ
なんで人間の女なんか にっ」
「目障りだから‥死んで よ」
潤那のその言葉を合図に、美蘭は魁の行く手を阻んだ。
そして潤那は、一瞬にしてゆきに近づき鋭く尖らせた爪を振りかざした―――
殺されるっ!
‥‥‥あれ…?
少し経っても何も起きず、固く閉じた目を恐る恐る開くと…
寸前の所で、潤那の首を掴み上げている魁の姿があった。
ゆきは窓際の方に視線を走らせると、姉・美蘭が血まみれの状態で力なく倒れていた。
っ!?
「ぐっ‥‥か‥い…?」
「これ以上ゆきに手を出 せば命はないぞ」
殺気のこもった目で睨みつけた魁は、首を掴んだまま美蘭の方へ投げ飛ばした。
「お姉様…」
「うっ…潤那…
…引き上げましょう… 」
潤那はボロボロになりながらも、血まみれになった姉・美蘭を支えながら去って行った。
「魁…」
「ゆき…
今すぐ‥お前を魔界へ 連れて行く」
「えっ…?」
突然の事にゆきは混乱してしまい、沈黙が2人を包み込んだ―――‥‥‥