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ちょっとえっちな短篇集

第9章 ナターレの夜に

吐いた息が白くて丸出しの頬がさっきから痛い

短い髪は好きだけどこの季節は寒いかな。
なんて思ってる間も延々と話し続けてる。

「近頃は買って済ませる家庭が多い中で手作りなんだが
これがそこらのパン屋がケツまくって逃げるくらいの旨さでな、
うちのマンマは料理全部上手だがパネットーネは絶品だ
どこの家も自分ちのが一番だって言うだろうけど
うちのは別格だ、賭けてもいい。」

聞いてもいないのに話し続ける、
図々しさと紙一重の要領の良さはいやな感じはしない。
これは天性のものだな、
アタシには絶対無理なタイプの才能だ。
顔が良くて口がうまいんだ、そりゃろくなやつじゃないわな。

まだまだ自分のマンマがいかにいい女かをとうとうと語ってる。
普段だったら殴ってるな。
ありえねぇ位の自分本意さなのに、
あんまりにもうまそうな話し方をするもんで。

「へぇ…どんなパネットーネなんだ?」
なんて聞いちまったのも普段のアタシならありえねぇ。

仕方ない。
ナターレの夜だからな。

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