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ちょっとえっちな短篇集

第9章 ナターレの夜に

「ナッツとレーズンがぎっしり入って
表面はシュガーで覆われてる普通のと言えば普通のなんだが
隠し味のブランデーがガキのころにはちょっと大人の味で、
ナターレが来るのが毎年楽しみだったのさ、
なんの因果か今年はこんなとこでこんな事になっちまってるが
オレはシエナで過ごしたくってな…
カッツォ!あいつらだ!おいかくまえ!」

複数台の車の音にはアタシだって気づいてた。
この男も一人で陽気にパネットーネについて語ってるけど気づいてたのか。
こんな面倒ごとなんざごめんなんだけど。

「ファンクーロ!タマは重いし服はシュミじゃねーし
シエナは遠い!ナターレだってのになんて夜だ!
ああ、頼む!うちのマンマの世界で一番うまいパネットーネ食わしてやるから!」

大げさな身振り手振りも役者みたいに様になってる。
この物騒な揉め事に付き合ってやる必要なんてないんだけど
顔が綺麗だから以外の理由を上げるとしたら
何だかんだでアタシも寂しかったのかもしれない。
考えつく中でもかなりサイテーな理由だけど。

車の音は近づいてる。さてどうしよう。

「仕方ねぇな、てめぇのタマつぶしてやるよ、
ナターレにパネットーネは必須だからな」

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