
ちょっとえっちな短篇集
第9章 ナターレの夜に
そう、自由を愛するロマの女だ。
ごまかしてたけど本当はもうこんな生活うんざりしていた。
自由なように見えるけど地域のロクでもない奴らに縛られて、
その中でだけ自由にさせてもらうみたいな、
そんなのって自由っていえるのか?
マンマが言ったあの月みたいな自由って何だ?
いつも考えてたけどこたえはわからなくて、
でも今のこの毎日とは違うから。
みんないい奴らだし狭いけど寝る場所だってある。
上を締めてる奴らだって、取り決めさえ守ってシゴトしてりゃそこまでうるさくもない。
だからここの暮らしが嫌いなわけじゃないけど、
でも時々、
毎日の食べるものにも困って、観光客相手に財布くすねたり
店からかっぱらったものを仲間同士で奪い合ってた頃の方が
自由だったんじゃないかって思うんだ。
くすねた財布の中身が重かったときはマンマが
イレーネ、アンタは私の誇りだよ、って頭を撫でてくれた。
その金はすぐに安いグラッパに消えたんだけども。
