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ちょっとえっちな短篇集

第9章 ナターレの夜に

「おらとっとと出せ!ナポリでいんだろ」

黒いベスパのシート下からメットを出して手渡して、
アタシの分はそこらからかっぱらって。
誰のか知らないけどあとで返すから、返せたらだけど。

「ナポリまで行ってトレーノでシエナ、
そっからオレのマンマの所まではちょっとあるけどまぁなんとかなるさ」
楽観的すぎる考え方だけど悲観的よりまだマシか。
シートにまたがると長い足が更に長く見えた。

悪くないんじゃないの?なんてロクでもないこと考えてたら
あ、これ預けとくな、使える?
なんて軽々しくグロック放り投げてきやがった。

プラスティックのフレームは体温がうつって暖かい。

「オレどうにもダメでさ、後ろから来たら適当に打っとけば牽制くらいにはなるんじゃない?」

ひっでーな、
アタシだってグロックはまともに使ったことないけど
こいつが持ってるよりマシだろ。

「つかアンタさっきっからマンマとシエナの話ばっかだけどあいつらにはその話してないだろうな」

シエナでばったりなんてシャレにならない。

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