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ちょっとえっちな短篇集

第1章 コンプレックス

似合わない。似合っていない。
鏡の中に写る自分を横目で見てもう一度ため息をついた。

顔立ちは整っていて女性的な優しさをたたえているし、
色素の薄い髪の毛が流れるうなじや指先や繊細さは間違いなく女性の物なのだが
その体つきは女性の物である。
と断言できるほど柔らかではない。

例えばこの胸。
華やかなフリルに飾られた小花柄の生地を撫でる。
膨らみのない平らな胸ではこの服は似合わない。
悠希の膨らみのない胸では全く、滑稽ですらある。
どんな女性らしい格好も似合わないのだ。

生地の感触を楽しむように胸元に手を這わせる。
平らな胸ではあるが布越しに胸の突起が感じられる。

足に逆の手を這わせる。
女性らしい柔らかい曲線とは違う筋張った足。
黒いソックスに包まれてはいるが女性らしさは感じられない。
昔から、昔からこうだった。
骨と筋、手に伝わる感覚も柔らかい物ではない。

子供の頃から痩せ気味だった。食べても太らない体質なのだろうか、
羨ましがる女友達の豊かな体のラインをこっそり隠し見た学生時代の記憶が読みがえって来た。

太股も余り肉がない。筋っぽくやさしい印象はない。

その奥、唯一自分が女性である証拠の器官に触れるとそこは既に潤っている様だった。

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