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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

 その時、桃華は彩鳳の顔色が冴えぬのに気づいた。枕辺の卓にある燭台の灯りに浮かび上がる皇帝の顔色は常になく悪かった。
「どこかお身体のお具合でもお悪いのでございますか」
 控えめに訊ると、皇帝は淡く笑った。
「揚と我が国の国境(くにざかい)が何かと騒がしいそうだ。彼(か)の国はさして大きくはないが、砂漠を自由に駆ける砂漠の民から成り立つ国家、たとえ死の砂漠を挟む位置にあるとは申せ、油断はならぬ」

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