テキストサイズ

仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第6章 三つめの物語~砂漠の鷹~

 一陣の風が梢を渡り、リーラの樹の葉が一斉にさわさわと音を立てて揺れる。砂漠を渡る風は熱い熱を孕んでいる。
「今でも忘れられない出来事がある。多くの罪なき生命を手にかけてきたが、思い出すのは、いつも彼の人の苦悶と哀しみに満ちた表情ばかりだ」
 修明の視線が再び遠くなった。その眼は、昔の、彼が忘れられないという罪を犯した日を見つめているに違いない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ