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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第2章 初めの物語~砂漠の花―ミイラが語る愛―~

 だが、理由(わけ)ありの旅人や隊商(キャラバン)の商人たちはかなりの困難と危険を十分承知しながらも、敢えて砂漠を横断する道筋を選ぶ。今、人眼を忍び、何かから逃れるように砂漠を旅するこの若き夫婦も恐らくは何らかの事情があるに違いないと思えた。
 旅に出てから数日を経て、夫婦は二人共に疲れ切っていた。殊にまだ年若い妻の方は疲労激しく、歩く足許さえおぼつかない。そんな妻を良人は殊更労った。その日、日暮れ前にオアシスに辿り着くことができたのは夫婦にとって幸運であった。

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