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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第2章 初めの物語~砂漠の花―ミイラが語る愛―~

 梨人の白い頬には幾筋もの涙の跡があった。その涙の跡をそっと指でなぞると、言い知れぬ哀しみが湧き上がった。
―可哀想に、どんなに辛かっただろう、どれほど怖かっただろう。
 眼の前で陵辱されている恋人を猛訓は助けてやることさえできず、ただ黙って眺めているしかなかった。恋人たる猛訓の前で、幼い少年は輪姦(まわ)されて、息絶えてしまったのだ。猛訓の胸にやり切れなさと無力であった我が身への悔恨の情が去来する。

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