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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

 ゆっくりと出てゆく彩鳳を桃華は茫然と見送った。彼は初夜の床で震える桃華に対して終始、紳士的な態度で接したのだ。それは、桃華が思い描いていた展開とは、あまりにもかけ離れていた。まるで真の娘に対するように優しく言い聞かせた言葉の数々は、怯えていた桃華の心をやわらかく解きほぐした。
 その夜、桃華の心に彩鳳への信頼が生まれた。実際に、皇帝は良人というよりは父か兄のように桃華にふるまい、その後も桃華に指一本触れようとはしなかった。

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