花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱
おみのと太助が死んでから、清七の刻は止まったままだ。何をしていても、おみのの笑顔が、太助の寝顔が眼の前をちらついて消えない。朝が来れば、布団から出て飯を食べ、仕事には出かけるが、所詮は身体が機械的に動いているだけのことで、心は死んだようなものであった。
仕事帰りに馴染みの〝いっぷく〟に寄って、夕飯を食べ、顔見知りと世間話にでも興じれば、いっときは忘れられるが、こうして店を出て一人になれば、おみのと太助のことをまた、思い出す。
仕事帰りに馴染みの〝いっぷく〟に寄って、夕飯を食べ、顔見知りと世間話にでも興じれば、いっときは忘れられるが、こうして店を出て一人になれば、おみのと太助のことをまた、思い出す。