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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 これは紙で季節の折々の花を作る、つまり造花を作る仕事だ。不器用なお民には最初は難しかったが、何度も同じ作業を繰り返している中に、次第に上手くできるようになった。それでも、一日中頑張ってみても、作れる花の数は知れている。たいした稼ぎにはなりそうにもなかったけれど、兵助が残してくれた金がかなりまとまってあったゆえ、そうやって内職をしながら慎ましく女一人で暮らしてゆけば、暮らしに困ることはなさそうで、とりあえず生活の目途だけついた。

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