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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 その日は、五日に一度、出来上がった花をまとめて口入れ屋に持ってゆく日だった。お民は紫や蒼、赤といった色とりどりの紫陽花を抱えて、町人町の口入れ屋まで出かけた。
 その朝、江戸にはいかにも梅雨空らしい鈍色の空がひろがっていた。が、お民の心は至って明るく弾んでいた。
 家を出たときは意気揚々と出かけたお民だったが、四半刻後、帰り道は出かけたとき晴れやかな気分が嘘のように、暗く沈んだ心持ちになっていた。

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