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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 源治を心底心配し、気遣っているお民の心がこもっていたからこそ、源治はお民の小言や説教を不快なものとは思わなかったのだ。
 源治にとって、お民は笑顔の眩しい他人の女房だった。幸か不幸か、他人の女に手を出せるほど、源治は無分別な男ではない。ましてや、お民と兵助が口では喧嘩ばかりしていても、内心は互いに惚れ合って労り合っているのがよく判ったから、邪魔をするような野暮はしたくなかった。

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