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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 男なら、惚れた女の幸せを陰ながら見守るのが筋ってものじゃないか。
 それは、多分、自分が格好つけたかったか、お民を無理に諦めようとしたかの口実のどちらかにすぎなかったろう。
 初めて見たお民の泣き顔は源治を大いに愕かせ、狼狽えさせ、そして、彼の心にしっかりと灼きついた。惚れた女の泣き顔は、笑った顔以上に、鮮烈に源治の心を捉えたのだ。
 あの女のことを、もっと知りたい。
 いつも傍にいて、笑顔も泣き顔もずっと見守っていたい。

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