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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 だが、美貌の女将のその言葉が真実であると誰が考えるだろうか。
 ―おれんのあのひと言は真だったのだ!
「弥助さん―? あたしが変なことを言ったから、気を悪くしたの、怒った?」
 おずおずと見上げてくるおれんの瞳は、親猫にはぐれ独りぼっちになった仔猫を思わせる。
「いや、何も怒ったりなんかしていねえよ。でも、なあ、おれんさん。それなら、これからは、俺を見てくれ。しっかりとそのきれいな眼を開けて、俺だけを見ちゃくれねえか」

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