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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 〝え〟と、おれんが眼を見開く。
 この女が俺をずっと待っていてくれた―この日まで待っていたと思うだけで、弥助の中に女への愛しさが迸るように湧き上がる。その想いのまま激情に任せて唇を塞いだ。
 それまで眼を開けていたおれんがまたしても閉じようとする。弥助はそっと女の手のひらに自分の大きな手を重ねた。
 睫が震え、殆ど閉じかけていた瞼がゆっくりと開く。大きな分厚い手と白い小さな手をしっかりと重ね合わせたまま、弥助はそっとおれんの唇から自分の唇を離す。

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