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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

「眼を閉じないで、俺を見て」
 耳許で吐息混じりに囁きかけると、おれんが白い身体をかすかに震わせた。
「所帯を持とう」
 耳許に寄せた唇はそのままに呟く。
 刹那、腕に抱いたおれんの身体から再び震えが伝わってきた。
「でも、あたしは、こんな女でもう若くはないし、おまけに飲み屋の女将風情で―」
 言い訳のように言って口ごもるおれんの唇を、弥助は再度、塞いだ。

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