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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 いつもは一合と決めているが、実はもっと呑んだとしても平気なのだ。丁度、弥助が顔を覗かせたときには、入り口に近い席に人足風の男二人がいたのだが、しばらくすると、男たちは勘定を済ませ、出ていった。
 二人を入り口まで見送っていったおれんが席を立ち、弥助は一人になった。手酌で空になった盃を満たす弥助の耳に、外に出た男たちの会話が聞こえてくる。
「おお、寒。今夜は滅法冷えるぜ」
「何だか雪でも降りそうな寒さだな」

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