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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 町人町の紅白粉問屋の前で藤次郎に絡まれていた時、すっとおれんの前に立ち庇ってくれた弥助。随明寺近くの出合茶屋で過ごした甘やかで濃密な、でも心優しいひとときのゆめ。
 ―だから、いつも、何があったとしても、そんな風に生きていって欲しい。
 弥助が最後におれんにくれたひと言がおれんの背中をそっと押してくれる。
 おれんは溢れ落ちる涙をぬぐいもせず、力を取り戻した瞳で前方を見つめた。

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