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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 千汐はゆっくりと視線を動かし、再び歩き出す。今年初めての雪は随分と身に滲みる。
師走に入って数日、今年もまた残り少なくなった。江戸の町中を暦売りが声高に呼ばわりながら来年の暦を売り歩いてゆく、そんな季節になった。道を行き交う人々の脚取りだけでなく表情までも何とはなしに忙しなくなり、人々は来るべき新しい年に希望という感情(おもい)を馳せる。

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