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　どうせ自分には身寄りと呼べる人もいない。二十二になりながら、良人もおらず、子もいない。ここで野垂れ死にしたって、哀しむどころか、荼毘に付してくれる人さえいないだろう。両親もとっくの昔にいなくなってしまった千汐は天涯孤独の身の上だった。
　この世の地獄、辛酸という辛酸をつぶさに見、嘗めてきた我が身にとって、死は最早、怖れるべきものではない。むしろ、憂き世の哀しみから解き放ち、浄土へと導いてくれる歓迎すべきものかもしれない。