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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 ふと呟いた男の何げないひと事に、千汐は弾かれたように面を上げた。
 真心、今、この男は何と言った? 確か、真心と言わなかったか。
 おつなの真心を疑いたくはなかったのだと。
「あんた、今、何て言ったの?」
 千汐は、夢中で男に取り縋っていた。
 視線と視線が吹き荒れる雪の中で、一瞬、絡み合う。
 千汐は、男の黒い瞳から、もう眼が離せなくなった。

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