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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 男の視線が不躾に胸許に注がれているのに気付き、千汐はさりげなく襟元を両手でかき合わせた。
「夜鷹に亭主がいちゃ、悪いかい?」
 千汐はわざと挑戦的に言い、胸許に伸びてきた男の手を向こうへと押しやった。
「生憎と、今日はもう商売じまいするつもりでね。これから亭主と待ち合わせてるっていうのに、他所の男の匂いをプンプンさせてるわけにはゆかないから」
 〝申し訳ないけど〟と、ひと言断って、千汐は婉然と微笑む。

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