花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
有無を言わさぬ力で押さえつけられ、千汐は男に抱え上げられた。
近くに誰も住む者のおらぬ空き家があったことが、千汐に不幸に繋がった。
男は千汐をその空き家に連れ込んだのだ。
乱暴に家の中に放り投げられ、千汐はしたたか腰を打った。痛みに呻きながらも、忙しなく周囲を見回すと、徐々に荒れた家の中が見えてくる。ふた間ほどの無人の家は荒れ放題に荒れ、至るところに蜘蛛の巣がかかり、埃がうずたかく積もり、もう長らく人が住んではいないことを物語っている。
近くに誰も住む者のおらぬ空き家があったことが、千汐に不幸に繋がった。
男は千汐をその空き家に連れ込んだのだ。
乱暴に家の中に放り投げられ、千汐はしたたか腰を打った。痛みに呻きながらも、忙しなく周囲を見回すと、徐々に荒れた家の中が見えてくる。ふた間ほどの無人の家は荒れ放題に荒れ、至るところに蜘蛛の巣がかかり、埃がうずたかく積もり、もう長らく人が住んではいないことを物語っている。