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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 和泉橋を渡った先に、元は一膳飯屋をしていた老夫婦が暮らしていた。店は別の場所にあったが、老夫婦はその今では無人となった家に住んでいたのだ。もう、十年近くも前のことになるだろう。
 自分は、その家に連れ込まれたのだ。
 気が付いたときには遅かった。男が後ろ手に入り口の腰高陰障子を閉めた。惨な笑いを浮かべながら、近づいてくる。
 抵抗すると、両頬を幾度も打たれ、眼の前で白い閃光がまたたいた。

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