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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 痛みのあまり、眼には涙が滲む。声も出せないでいる千汐の上に馬乗りになり、男は狂ったように千汐の帯を解いていった。
「夜鷹なんぞがお高く止まりやがってよ、何さまのいつもりだ」
 男は饐えた息を吐きながら、千汐の身体中をまさぐった。
 千汐の眼に、六年前の光景がまざまざと甦る。吉原の女となって初めて客を取らされた夜、自分にのしかかってきた男もこんな眼をしていた。

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