花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱
清七は妻を辱め、倅を殺めた瀬田川を逆に絞め殺してやりたいほど憎んだが、生憎とはきとした証拠がない。瀬田川が清七の家に確かに入ってゆくところを見た同じ長屋の住人がその直後、おみのの悲鳴や太助の泣き声を聞いている。
しかし、その現場を直接見たわけでもなく、瀬田川に真っ向から〝知らぬ〟と突っぱねられれば、自身番に訴えるわけにもゆかない。復讐と怒りの焔に身を灼き焦がしながらも、清七は隣人たちに懸命になだめられ、何とか瀬田川を手にかけずに済んだ。
しかし、その現場を直接見たわけでもなく、瀬田川に真っ向から〝知らぬ〟と突っぱねられれば、自身番に訴えるわけにもゆかない。復讐と怒りの焔に身を灼き焦がしながらも、清七は隣人たちに懸命になだめられ、何とか瀬田川を手にかけずに済んだ。