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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 もしや、この子は―。
 曽太郞は改めて子どもの顔を見た。五歳くらいの愛らしい、利発そうな男の子である。
 子どもの歳格好からすれば、六年前に随明寺門前道の出合茶屋で共に過ごした頃、千汐がこの子を宿していたとしても不思議ではない。
 曽太郞は自分もしゃがみ込むと、子どもと同じ眼線の高さになった。子どもの無垢な瞳が曽太郞をじっと見つめている。

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