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紫陽花(オルテンシア)~檻の中の花嫁~

第6章 光と陽だまりの章③

 勇一に告げたら、もう踊り出さんばかりに歓んで、美月のお腹に触っては〝動いた、動いた〟と相好を崩している。
 奇妙なことに、美月が呼びかけても何の反応もないことも多いのに、勇一が〝梅芳〟と呼ぶと、腹の赤ン坊は現金(?)にポンポンと返事するかのようにキックしてくる。
 勇一は早くも〝末は天才だ!〟と親バカぶりを発揮していた。
 そんな歓び様を見るにつけても、本当にこの子が勇一の子どもだったら-と、美月は幾度、願ったかしれない。
 勇一が本当に〝梅芳〟と名付けたいのであれば、女の子なら、そのまま正式名にしても良いと思っている。
 しかし、実のところ、美月と勇一の間にはまだ何もない。
 結婚指輪を買って身につけ、互いの意思を確かめ合った今もなお、二人はプラトニックな関係を続けていた。
 一つには美月がいまだに晃司にレイプされたときの記憶から逃れられず、勇一が床の中で手を伸ばしてきただけでパニック状態に陥ることもある。

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