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甘恋〜こ、こんなのあり?〜

第19章 知らない雅の姿

あの人とは別れ、あたしたちはすぐに帰ることにした。


…というより、雅が帰ると言い出したのだ。


駅から屋敷までの道のりが、いつもより長く感じるのはあたしだけなのかな。


あの人…きっとお金持ちなんだろうな。


そうじゃなかったら、雅が社交辞令を言うはずないもの。


そんなことよりも。


“あなたには、わたしがいるんですもの”


頭の中で何度も響く、彼女の声。


わたしがいるって、どういうことなんだろう…雅の恋人、ってこと?


それとも、雅はお金持ちだから…


あの人は婚約者とか?


「…心乃」


ぐるぐるとかけめぐる中で名前を呼ばれ、あたしは歩みを止めた。


「…ちゃんと、話すから。

まずは屋敷に帰ろうぜ、な?」


そう言ってあたしの手を引っ張る雅。


その動作に、嫌でもキュンとしてしまうあたしの心臓は、本当にバカだ。


「帰ったら陸がいるよ?

それでもいいの…?」


そう言ったあたしに、雅は前を向いたまま答えた。


「あいつにも…話さないとならねぇから」


陸にも話さなきゃならないこと…?


ますますあたしの頭はちんぷんかんぷんになるだけだった。

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